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トートタロットはアレイスター・クロウリーとレディ・フリーダ・ハリスが制作したタロットデッキです。占星術・カバラ・錬金術の象徴を高密度に組み込んだ芸術的作品です。
トート・タロット(Thoth Tarot)は、イギリスのオカルティスト、アレイスター・クロウリーが設計し、画家フリーダ・ハリスが描いたタロットデッキです。ゴールデンドーンの秘教体系とクロウリー独自の哲学「セレマ」を融合させた、芸術性と神秘性を兼ね備えたデッキとして高い評価を受けています。
古代エジプトの知恵の神トート(ギリシャ名ヘルメス)にちなんで名づけられたこのデッキは、カバラ、占星術、数秘術、四大元素の対応が明示的にカードに記されている点が特徴です。ライダー=ウェイト版やマルセイユ版と並ぶ「三大タロットデッキ」のひとつとして、世界中のタロット実践者に愛用されています。
アレイスター・クロウリー(1875〜1947年)は、イギリスのオカルティスト、魔術師、作家、登山家です。裕福なプリマス・ブレズレン(キリスト教の一派)の家庭に生まれ、ケンブリッジ大学で学んだ後、1898年にゴールデンドーンに入団しました。
団内での対立を経て離脱した後、独自の魔術哲学「セレマ」を確立しました。「汝の意志することを為せ、それが法の全てとなるべし(Do what thou wilt shall be the whole of the Law)」というセレマの根本原理は、トート・タロットの全体に反映されています。
生前は「世界で最も邪悪な男」とメディアに呼ばれるなど物議を醸す人物でしたが、西洋神秘学の歴史において極めて重要な存在であり、現代のオカルティズムに計り知れない影響を与えています。
レディ・フリーダ・ハリス(1877〜1962年)は、イギリスの画家であり政治家の妻でした。射影幾何学(プロジェクティブ・ジオメトリー)に強い関心を持ち、数学的な美と神秘的なビジョンを融合させた独自の画風を確立しました。
クロウリーとの出会いは1938年で、当初は3ヶ月の予定でタロットの制作を開始しました。しかし、クロウリーの完璧主義とハリスの芸術的探求心が相まって、制作は5年に及びました。一部のカードは何度も描き直され、合計で1,200枚以上の習作が制作されたとされています。
ハリスのイラストは、タロットカードの域を超えた芸術作品として評価されており、原画はロンドンのウォーバーグ研究所に所蔵されています。
| 年代 | 出来事 |
|---|---|
| 1938年 | クロウリーとハリスが制作を開始 |
| 1941年 | ハリスの原画展がロンドンで開催 |
| 1943年 | 78枚すべてのカードが完成 |
| 1944年 | クロウリーの解説書『トートの書(The Book of Thoth)』出版 |
| 1947年 | クロウリー死去 |
| 1962年 | ハリス死去 |
| 1969年 | デッキとして初出版(小型版) |
| 1986年 | 大型版(「グリーンボックス」)出版 |
トート・タロットは、大アルカナ22枚と小アルカナ56枚の計78枚で構成されます。ゴールデンドーンの対応体系を基盤としつつ、クロウリー独自の変更が多数加えられています。
クロウリーは自身の哲学に基づき、いくつかの大アルカナの名称を変更しました。
| 番号 | 伝統的な名称 | トート・タロットの名称 | 変更の理由 |
|---|---|---|---|
| VIII | 正義 | 調整(Adjustment) | 天秤座のより深い意味。バランスの動的調整 |
| X | 運命の輪 | 運命(Fortune) | シンプル化 |
| XI | 力 | 色欲(Lust) | 獅子座のより原始的で力強いエネルギー |
| XIV | 節制 | 技(Art) | 錬金術的変容の創造的プロセス |
| XX | 審判 | 永劫(The Aeon) | セレマの新しい時代の到来 |
これらの変更はクロウリーのセレマ哲学を反映しており、カードの本質的な意味をより深く表現することを意図しています。
コートカードの名称と対応がゴールデンドーンの伝統に基づいて再構成されています。
| 伝統的名称 | トートの名称 | 元素 | カバラの世界 |
|---|---|---|---|
| キング | ナイト | 火 | アツィルト(流出) |
| クイーン | クイーン | 水 | ブリアー(創造) |
| ナイト | プリンス | 風 | イェツィラー(形成) |
| ペイジ | プリンセス | 地 | アッシャー(活動) |
トート・タロットの小アルカナ数札(2〜10)には、占星術のデカン(各星座の10度区分)が割り当てられ、カードに明記されています。
例:
この対応により、各カードの意味が天体のエネルギーとして精密に定義されています。
ハリスの絵は、射影幾何学の影響を受けた独自のスタイルで描かれています。
特徴:
リーディングはライダー=ウェイト版とは異なるアプローチが必要です。
重要なポイント:
クロウリー自身は逆位置を使用しない立場でした。トート・タロットでは「品位(ディグニティ)」のシステムを使います。
元素の関係:
クロウリーの著書『トートの書(The Book of Thoth)』(1944年)はトート・タロットの公式解説書です。非常に密度の高い文章で書かれていますが、各カードの詳細な象徴解説が含まれており、トート・タロットを深く学ぶための必読書です。
| 特徴 | トート・タロット | ライダー=ウェイト版 | マルセイユ版 |
|---|---|---|---|
| 制作年 | 1938〜43年 | 1909年 | 17〜18世紀 |
| 設計者 | クロウリー | ウェイト | 伝統(職人の手による) |
| 画家 | フリーダ・ハリス | P.C.スミス | 木版画職人 |
| 小アルカナ数札 | 抽象的+タイトル+占星術 | 場面イラスト | スートシンボルのみ |
| コートカード | ナイト・クイーン・プリンス・プリンセス | キング・クイーン・ナイト・ペイジ | ロワ・レーヌ・カヴァリエ・ヴァレ |
| 逆位置 | 不使用(品位システム) | 使用可(一般的) | 流派により異なる |
| 対象レベル | 中〜上級者 | 初心者〜全レベル | 中〜上級者 |
| 思想的背景 | セレマ魔術 | キリスト教神秘主義 | フランス・オカルティスム |
一般的には中〜上級者向けとされています。カバラや占星術の知識があることが前提のデザインであり、クロウリー独自の用語やコンセプトも理解する必要があります。まずライダー=ウェイト版で基礎を身につけてから取り組むのがおすすめです。ただし、トートの美しいアートに惹かれて最初からこのデッキで学ぶ人も少なくありません。
クロウリーは生前「世界で最も邪悪な男」と呼ばれましたが、これは当時のメディアによるセンセーショナルな報道の影響が大きいです。慣習にとらわれない生き方やスキャンダラスな行動は事実ですが、彼の知的貢献——タロット、魔術理論、哲学——は極めて価値が高く、現代の西洋秘教研究において不可欠な存在です。
クロウリー自身は逆位置を使用しませんでした。代わりに「品位(ディグニティ)」のシステム——周囲のカードとの元素的関係——から意味のニュアンスを判断します。このアプローチはマルセイユ版の伝統的な読み方にも通じるものがあります。
トート・タロットを本格的に使うなら必読です。ただし、非常に密度の高い文章で、カバラ、占星術、セレマの知識を前提としているため、初読では理解しにくい部分もあります。ロン・マイロ・デュケット著『Understanding Aleister Crowley's Thoth Tarot』が入門書として優れており、まずこちらから始めるのがおすすめです。
両者ともゴールデンドーンの対応体系を基盤としていますが、トート・タロットにはクロウリー独自の「セレマ」の哲学が大幅に反映されています。カード名の変更(力→色欲、節制→技など)、コートカードの名称変更、フリーダ・ハリスの抽象的なアートスタイルが主な違いです。ゴールデンドーンの伝統を「進化させた」デッキとも、「逸脱した」デッキとも評されます。
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